フルーティストのための呼吸訓練法セミナー(3)

フルーティストのための呼吸訓練法セミナー(3)

フルートを演奏するためのより良い呼吸訓練法と、その具体的な修得法についての研究・発表です。引用なさる場合はご一報下さい。またご意見、ご質問などお寄せ頂ければ幸いです。

 

5. トレーニングとのつきあい方

一生懸命トレーニングに取り組んでいると、吹いている時に呼吸のことばかり考えてしまったり、リラックスしようとするあまり集中力がなくなったりします。フルートを吹くという事は音楽を演奏するという事であり、音楽を演奏するということは音楽の中に身も心ものめり込むということです。「音楽」という真剣勝負の場で「上手く呼吸しよう」とは、むしろ邪念でしかありません。


森先生はこうもおっしゃっていました。音楽を本当に感じて歌おうとしていれば、身体は勝手についてくるものだと。まあ、これは究極論ですけれども、やはり音楽を演奏するのであれば、上手い下手以前にまずは「魂を込めろよ」という事だと思います。

それから、一日中トレーニングしてたり、やたらと腹筋だけ鍛えて「極めた」というのもちょっとお門違いかもしれません。フルートを吹くのには、スポーツマンのようなものすごい筋力は必要ありません。柔軟に、思い通りに反応する筋肉を養うことが大事なのです。それよりなにより、いくら呼吸が大事と言っても、フルートを吹くのには先ずフルートの練習が必要ですから、トレーニングをしたならそれを生かすという形で、どんどんフルートを吹いていって下さい。

呼吸法の修得、フルートの演奏法の修得は長~い長い道のりです。心身とともに、少しずつ進歩していくものなんです。世界中の一流フルーティストたちも、泳いだり、山に登ったり・・人知れず体力づくりをしています。楽しんで、この長い過程を地道に進んで行っているのです。「今年中」「来月のコンクールまでに」とか気の短いことを言っていないで、ずうっと一緒にこの道を歩いていこうじゃありませんか。


6. お悩み別ひとくちアドバイス

よくある質問をまとめてみました。

Q. 息が長く続きません。どうしたら良いですか?

A1. 初心者の方・・・アンブシャー(吹く時の口の格好)に問題があるケースが多いです。鏡に向かってマウスピースのロングトーンをいっぱいしましょう。

A2. 中級以上の方・・息の「量」と「スピード」で「パワー」を追求していませんか?アメ車のようなエネルギーの無駄遣いをストップするために、この際1から腹式呼吸を勉強しておこう!

Q. 音程が合わないのですが?

A. まずは1つの音をまっすぐな音程で吹けるようにします。チューナーを用意し、ロングトーンをしてみましょう。安定した呼吸がなければ、音程も安定しないということが分かるでしょう。トレーニングのかたわら毎日しっかりロングトーンをさらう事と、ピアノの鍵盤をたたきながら吹いたりして自分の耳も鍛えると良いです。

Q. 低音が吹きにくいのですが?

A. 色んな所に力が入っています。「アゴ」「肩」「のど」をチェックしてみて下さい。初心者になったつもりで、素の状態に戻します。一度入った力は結構クセモノで、時間はかかりますが根気良くほぐしていって下さい急がば回れ、低音は非常に大事です。そこからしっかりおなかを引き締めて腹式をマスターしていきます。バタ足腹筋がオススメです。

Q. 高音が出しにくいのですが?

A. まず不必要に力んだ「アゴ」と「唇」を楽にします。次に、おへその5cmくらい上の所の「横隔膜」を手で押さえながら「犬の呼吸」。次に出しやすい中音からオクターブ上がる練習をしてみます。上がる時に「横隔膜」にグッと圧力がかかるようにします。息の方向が「下方向」から「前方向」に切り変わるように下唇を使います。これでも息苦しい人は「のど」がしまっています。のどを開くを参考にして下さい。

Q. どうやってヴィブラートをかけるのですか?

A.ヴィブラート」を参考にして下さい。でも無闇やたらとかけるよりは、何も無い方が無難だったりします。ウィーン少年合唱団を目指すか、都はるみになるか、その人の音楽性とセンスの問題です。いかに適切に、効果的にヴィブラートを使えるかが大事なのです。コントロール不能のヴィブラートぐせをつけてしまうより、基本の音をしっかりと磨いて下さい。


 

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